日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.104
令和6(2024)年12月1日
(本メールマガジンは毎月1回1日に配信しています)
【本号の内容】
〔連載〕
1)今月のチェックリスト
乳幼児施設における災害対策について
2) 時事/用語解説
養護老人ホームの現状とこれから/関連政策の統合をめざして
3) 会員のつぶやき
4)施設長のための業務チェックリスト(実践のポイント)取り組み紹介
〔お知らせ〕
○施設長のための業務チェックリスト(実践のポイント)のご紹介
○第1回〜第3回施設長実学講座(1/21〜22、1/29、1/30)
*本号本文は約4,250文字です。
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〔連載〕
1)今月のチェックリスト
「乳幼児施設における災害対策について」
今年は年始から大きな地震が発生するという今までにない1年の始まりで、日頃からの災害対策の見直しを考えさせられました。もう今年もあと1ヶ月となりましたが、全国各地で頻繁に地震や台風、大雨などで多くの被害が発生しており、もはや災害は日常と思われる1年でした。そこで、乳幼児を預かる当福祉会の施設で日頃から対策していることをまとめてみました。
〇乳児〜5歳児における災害対策
□保育室内に大きな物で上から落ちてくるものはないか
□防災頭巾は人数分あるか
□3歳以上は園外に出る時は常に防災頭巾を持って出ているか
□乳児用避難車は人数分確保できているか
□1歳児の避難用シューズは人数分あるか
□すぐに外に出られるように2歳児以上は全員シューズを履いているか
□非常用ミルクは人数×3回分あるか
□非常食は園児数×3日分あるか
□非常用品(防寒・排泄)は3日程度あるか
□乳児用おんぶひもの数が全員分あるか
□職員用ヘルメットが人数分あるか
□職員はすぐに外に出られるようにシューズを履いているか
□職員は笛を持っているか
□災害発生時は、非常ベル→一斉放送→避難、という訓練時と同じ流れで避難誘導や待機場所の確保を行うことを全員把握しているか
□災害発生時に一斉放送の内容が聞けるように3歳児以上は日頃から笛が鳴ったら静かにすることを職員は心掛けているか
毎月の訓練では火災・台風・地震・津波・大雨・不審者など様々な想定で避難しており、非常ベルを鳴動して一斉放送で避難場所を知らせて誘導しています。乳児・1歳児クラスは自分で避難することができないので、おんぶひも・避難車に乗って避難するため配置人数以上に災害時はサポートが必要になってくるので、訓練時に別のクラスから応援要請が必要になります。
宮崎県では、8月8日に日向灘を震源とするマグニチュード7.1(震度6弱)の地震が発生し、ちょうど本会の九州・沖縄ブロックセミナーが福岡で開催されていて、各県から80名を超える方が参加されており、施設の安全をそれぞれ電話で確認されていました。南海トラフ臨時情報も発表されるという初めての経験もあり、毎日、ヒヤヒヤしながら子ども達と過ごしていたことを思い出します。
来年はどのような災害が起こるのかわかりませんが、災害とは切っても切れない日常が続くことは間違いないのではないでしょうか。乳幼児の命を預かる我々の施設としては、訓練によっていつ災害が起きても対応し得る術を身につけておくことも、今後の人材育成の1つのポイントだと思っています。
(宮崎県 社会福祉法人ゆりかご福祉会 ゆりかごWEC学院 副園長 國友 弾(No.4841))
2) 時事/用語解説
「養護老人ホームの現状とこれから/関連政策の統合をめざして」
福祉新聞の7月23日号では、全国老人福祉施設協議会の調査によると、2023年度の養護老人ホームの平均入所率が0.9ポイント減の86.3%であったと報じている。2018年度からの6年間で3.7ポイント落ち込んでおり、2022年度は定員を減らした施設が20か所あり、5年前より施設が31か所減っているという。入所率の低下は経営にも深刻な影響を与えているとのことである。
老人福祉法第11条「老人ホームへの入所等」によると、「市町村は、必要に応じて、次の措置を採らなければならない。一 六十五歳以上の者であって、環境上の理由及び経済的理由(政令で定めるものに限る。)により居宅において養護を受けることが困難なものを当該市町村の設置する養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する養護老人ホームに入所を委託すること」としている。さらに、「養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」では、施設長は「社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者若しくは社会福祉事業に2年以上従事した者又はこれらと同等以上の能力を有すると認められる者でなければならない」とし、運営規程等も細かく決められている。定員は20名以上である。
入所措置においては、自治体の予算抑制を背景とする「措置控え」(入所よりも居宅等への紹介が優先されること)もあるようである。介護保険の特定施設入居者生活介護の指定を受けている施設は54.3%で、入所率は指定を受けていない施設より高い傾向にある。契約入所の受け入れをしている施設は20%で、年々増えているという。
入所率が80%未満の都道府県は13県あり、沖縄県(55.3%)、富山県(62.2%)等が低いとのことである。
運営形態は、かつて公設公営がほとんどだったが、現在は民設民営や公設民営の割合が増えている。
養護老人ホーム創設時は、低所得の高齢者のための救貧施設という側面があった。今日的な役割は、家族・親族・地域のサポートを充分受けられず、経済的あるいは心身の問題といった複合的な問題を抱える高齢者のために生活支援や経済的な自立支援等を行う施設であるといえよう。
一方、生活保護法のもと、多様な障害、疾病、生活困難を抱える方々のための救護施設があり、入所者の福祉向上をめざす施設関係者も会員にはおられ、施設によっては福祉QC活動等も活発に展開されている。なお、前述の養護老人ホーム関係者は多くの会員がおられると思われる。
このような会員各位の優れた実践者の皆様が、生活保護法、生活困難者自立支援法、高齢者社会対策法等の関連諸法規・諸施策の連係・整備等にあたり、現場実践に基づいた提言をすべき時なのではないか。関連するわが会の会員の皆様の発言に期待したいと思う。
(広報委員 新潟県 大澤 澄男(No.1030))
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3) 会員のつぶやき
このたび息子とアカウントをシェアし、念願のネットドラマ視聴デビューとなりました。「地面師たち」「極悪女王」「サンクチュアリ -聖域-」、いずれもおもしろい! テレビドラマとは一線を画すエッジの利いたコンテンツ。今回、特にご紹介したいのが「極悪女王」。80年代に女子プロレス旋風を巻き起こし、日本史上最も有名なヒールに成り上がっていくダンプ松本。物語に1ミリの救いもない。アルコール依存症の父親からの虐待、チェーンとフォークで対戦相手を容赦なく血だるまにする残忍さ。全編徹底したダークヒロインの降誕記で押し切ってしまうのかと思いきや、終了間際まさかの展開。最後に登場する少女の目を通して見えてくるのは「確かな希望の光」…。
困難さを抱える利用者一人ひとりと向き合いつつ、そこから映し出される社会の歪みに、私たち施設長はどこまで立ち向かうことができるのでしょう。私たちも試されています。そんな私たちは決して1人ではありません。本会スローガン「共に学び、共に深め、共に育み、共に創る。」の精神で多くの仲間と繋がることのできる居場所です。ここに「確かな希望の光」を見出すことができるのです。
(千葉県 社会福祉法人ミッドナイトミッションのぞみ会 望みの門学園 施設長 田尻 隆(No.4692))
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4) 施設長のための業務チェックリスト(実践のポイント)取り組み紹介
今月号では特別編として、近年の調査に見る社会福祉法人の経営状況やこれからの理事会の役割等についての寄稿を掲載いたします。
福祉医療機構の2022年の調査によると、全国で35.7%の社会福祉法人が赤字に陥っています。医療法人、社会福祉法人をはじめとして他(多)事業展開は赤字率を下げるという結果はいくつもの先行研究で認められています。しかし、統計上人口2万人以下の自治体では、例えば高齢福祉事業と保育事業を併せて行うなどの他事業展開は、経営上の有意差を示さなかったのです(参考文献1)。
その前提で、今後、過疎地域における社会福祉法人の生き残り戦略を考えた場合、社会福祉連携推進法人制度を活用することによる根本的な経営基盤の強化の他に、法人に関わる役員(理事・評議員)の役割の明確化と連携があげられると考えます。
ここで、経営の根幹である理事会の考え方を米国のNPO法から検討した論文があり、米国のNPOでは、一般社会の利益を信託された財産とミッションを守っていく受託者責任と社会全体へのアカウンタビリティを負うのが理事会の役割だとしており、一見称賛に値しますが、実際には米国の社会的信用が高い大学などや交響楽団などの理事には富裕層や財界のリーダーが就任し、ただの名士クラブになることもあるとしています(参考文献2)。
人口減少の中で、理事の役割はいかに変化していくべきでしょうか。本来の経営の管理層は理事会です。今までの「理事会」のあり方や常識を少し疑ってみてはいかがでしょうか。
(参考文献)
1.Journal of Human Life Design、「社会福祉法人の経営状況にみる課題と展望 −財務事業と実施事業からの分析-」早坂聡久、2022。
2.The Nonprofit Review、「NPOガバナンスの日米比較 −NPO法人法における構造と課題−」河島伸子、2005。
(東京都 昭和女子大学研究員 中川 尋史(No.5940))
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〔お知らせ〕
○施設長のための業務チェックリスト(実践のポイント)のご紹介
このたび、標記チェックリストをご紹介するチラシを作成しましたので、まだ活用されたことがない会員の皆様もチラシをご覧いただき、積極的にご活用ください。
・チラシはこちら
https://x.gd/sJFgR
・施設長のための業務チェックリストはこちら
https://x.gd/OmLP5
○第1回〜第3回施設長実学講座のご案内
第1回「会計管理・財務管理」(1月21日〜22日)
https://x.gd/NFh1Z
第2回「演劇手法による苦情対応の実践」(1月29日)・第3回「ハラスメントの現状と対応」(1月30日)
https://x.gd/jiHgL
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