日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.95
令和6(2024)年3月1日
(本メールマガジンは毎月1回1日に配信しています)
【もくじ】
1) 今月のチェックリスト
:虐待は絶対に許されない!
2) 時事/用語解説
:郵便料金値上げと保育、障害、介護の観察力と記録
3) 会員リレーコラム(最終回)
:(1)認知症グループホームの新規開設と地域住民
(2)ファジーネーブルの味わい?−利用者と職員との境界線の曖昧さについて−
4) 「施設長のための業務チェックリスト」取り組み紹介
*本号本文は約4,280文字です。
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1) 今月のチェックリスト
「虐待は絶対に許されない!」
障害者虐待防止法は、平成24(2012)年10月1日から施行されました。障害者とは、
「身体障害者、知的障害者、精神障害者(発達障害を含む。)その他心身の機能の
障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活
に相当な制限を受ける状態にあるもの」としており、障害者手帳を取得していない
場合も含まれる点に留意が必要です。
□障害者虐待の未然の防止に取り組んでいますか
施設、事業所での虐待を未然に防ぐためには、そのためのしくみと体制の整
備が必要です。人権意識や支援技術の向上という職員一人ひとりの努力とともに、
組織として、安心、安全な質の高い支援を提供する姿勢を示さなければなりません。
特に、法人の理事長、施設・事業所の管理者は、障害者の人権を擁護する拠点
であるという高い意識と、そのための風通しの良い開かれた運営姿勢、職員と共に
質の高い支援に取り組む体制づくりが求められます。
□自分自身の支援の振り返りを定期的に行っていますか
職員は、普段の利用者さんへの支援を定期的に振り返る機会が大切であると思い
ます。虐待は、職員のその時の感情で起こったりします。利用者さんに不適切な支
援をしていないか?施設内研修等で、グループワーク等でお互いの思いを出し合う
機会も大切であると思います。
(執筆:広報委員 三重県 山野 文照 No.1006)
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2) 時事/用語解説
「郵便料金値上げと保育、障害、介護の観察力と記録」
総務省は、今年秋頃に郵便料金を諸経費高騰などで引き上げる法改正を予定している。
22年度は民営化初の2,211億円の赤字で封書は94円から110円、定形外は3割以上、
葉書は63円から85円に値上げなどを検討している。さらに26年度以降は再赤字転落の
見込み。郵便物は、2000年以降毎年件数が減少し、22年度は144億通へと半減した。
今後もメールなどの通信機器の発達、土日配達の廃止、小型荷物のヤマト運輸への配達
受託などもあり、郵便物は減る予想である。それを利用者負担で解消しようとすることは、
まだまだ公営事業時代を引きずり、民営企業への転換が出来ていないのかと考えてしまう。
減少した部分への機構改革、物、人員の削減を行うと共に、新しい分野での展開による
収益をめざすなどは試みているのだろうか。
デンマークでは、郵便物の減少対策に対応する徹底した機構改革、物と人員の削減を
実施していた。町に出ても、郵便局が見当たらない。廃止かと想ったが、窓口業務を
スーパーなどに委託し、スーパーの入り口付近のケーキ売場の隣などに小さな郵便物
受付け窓口を置き、研修を受けたケーキ売場の職員などが窓口業務を行っていた。
小鳥の図の切手や小荷物を入れるパッケージは売っているが、あとは自分でやることを
求めている。そうして発送したら1週間程度で付箋が付いて戻ってきた。開封はされてい
ない。開いて調べみたら小さなスプレーびんが紛れ込んでいた。プライバシーに配慮して
開封もしていないが透視で内容を調べ、機内にのせられないものをチェックしていたようだ。
必要な配送、検査などの業務は行われている。スプレーびんを取り除いて再発送したら無事
に日本に到着した。ポストの数も随分少なくなっていた。
わが会も、訪問介護やデイサービス、あるいは特別養護老人ホームなどでの赤字運営も目
に付くようになってきている。デジタル化、省力化も進められているが、コロナ禍などで
面会や外出が制限され、手紙、小包などの間接的通信手段が利用されたり、重要書類等は
紙媒体で送付している。
郵便料金引き上げには関心がある。保育、障害、介護の記録などもデジタル化、AIへの
まるなげ、省力化が進み、行動や介護の観察、記録がパターン化されている。デジタル化
されている例文を便利に使ったりすることが目立ってきていないか。
介護福祉士をめざす専門学校の学生にも、文章作成が苦手な学生、大体の漢字はわかるが
正確に書けない学生、記録を深い観察をもって、正確に記録できない学生が目立っているよ
うに思う。深い洞察による観察と記録の重要性を説くと、文章を書く方法を教えてほしいと
質問がくる。私はわかり易く、有効な方法として「短くとも毎日、日誌をつけること」と
「新聞を読むこと」と答えている。「心優しさ、科学する姿勢、実践する汗」を見本にして
と言っている。デジタル化、機器利用の流れと共に、観察と記録の力を日に強めることを
学生に求めたい。
(執筆:広報委員 新潟県 大澤 澄男(No.1030))
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3) 会員リレーコラム
(1)「認知症グループホームの新規開設と地域住民」
今年3月の認知症グループホーム開設に向けて、現在、建設が進んでいます。工事着手に
先立ち、地域住民向けの説明会を開催しました。「利用者が徘徊し、勝手に私の家に上がり
込んで、ご飯を食べていたらどうすればいいんだ」という質問が出るなど、快く思わない方
がおり、認知症に関する理解も様々である事がわかりました。説明会の雰囲気は張り詰めた
ものでした。
屋根の形ができ、上棟式(餅撒き)に地域住民を招待したところ、子どもたちも含めて
200名以上が集ってくれました。お菓子を沢山取ろうと、大変な盛り上がりを見せました。
近年では珍しい行事なので、大人の方には懐かしく、子どもたちにとっては初めての経験と
なったことでしょう。
最近では、グループホーム利用の問合せ、自治会への加入のお誘い、近隣のスーパーによ
る巡回販売車の販売会場に敷地の駐車場を利用したいとの要望等を受け、徐々に歓迎ムード
に変化してきたように思います。
新たな地での新設にあたり、事業所が地域住民に可愛がられ、育てていってもらえるように、
地域に溶け込む努力と覚悟が必要なのだと学びました。
(執筆:菊池 譲さん(No.5006))
(2)「ファジーネーブルの味わい?−利用者と職員との境界線の曖昧さについて−」
私は現在、救護施設で施設長をしています。救護施設は障がい等さまざまな生きづらさを抱
えている方々の自立支援を行っている施設です。生きづらさの原因は様々で、いわゆる3障害、
発達障害、パーソナリティ障害、知的障がいのグレーゾーン、また成育環境や生活歴の課題な
ど様々です。そのような方々に日々接しています。
「答えが出ない、はっきりしない、そのような曖昧な状況に耐える、あるいはそのまま受け取
ること」そのことが優れた支援者に求められる力じゃないか、最近そう思います。
フィンランドのケロプダス病院で始められ、今は日本でも少しずつ浸透してきている
「オープンダイアローグ」という統合失調症を中心とする精神疾患の治療方法があります。
あくまでも「対話」をし続けることが目的であり、治癒とか解決するとかいうことは結果である、
という強い信念をもった方法論でもあります。私自身、まだ書物で学び始めた段階で、その奥深さ
に触れることは出来ていませんが、今後の支援者としての道しるべになるという確信めいた予感が
あります。
その方法論の原則の一つに「Tolerance of Uncerrainty(不確実なことへの耐性、すぐに答えに飛
びつかない)」ということがあります。私たちが支援者として利用者の方々に関わる時、どうし
ても「支援者として応えを出さなければならない」、「結論を出さなければならない」という
脅迫めいた信念があると思います。これは仕事をする上ではある意味当然の感覚ですが、しかし
ややもすると「パターナリズム」の罠に陥る危険性もあります。それはつまり、利用者の持って
いる力を蔑ろにすること、支援者が対象者をコントロールすること、に繋がったりすると思います。
利用者と職員の間を隔てるものってなんだろうか・・・?たまたま、あるいはご本人の責任では
なく、自分ではどうしようもない理由で、「被支援者」となった方と職員はどう対峙すればいいの
か?私が「被支援者」に常に意識しなければならない疑問ではないかと思います。
(執筆:佐々木 和也さん(No.5492))
→今回で会員リレーコラムは終了となります。
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4) 施設長のための業務チェックリスト(実践のポイント)取り組み紹介
日本福祉施設士会の「施設長のための業務チェックリスト(実践のポイント)」を使用しての
感想をご紹介します。
今回は、広島県 柿木田 健氏(No.4685)のレポートです。
広島市にある社会福祉法人広島常光福祉会の柿木田と申します。令和2(2020)年より理事長
に就任し、その際に理事長業に専念する方針で、理事長・施設長の職務権限事項を決定しました。
施設長の役割はないため、施設長をマネジメントする上で、「施設長のための業務チェックリスト」
を活用しています。
現場での経験を積んできた施設長も在籍しており、経営の視点にはまだ慣れていないかもしれま
せんが、利用者や地域社会だけでなく、広い視野を持って活動しています。「施設長のための業務
チェックリスト」を元に、新任の施設長が施設を利用者や地域社会に信頼されるものに育て上げる
ための努力をしています。
このチェックリストは、新任の施設長が自身の方針を整理し、具体的な行動指針を得るのに非常
に有益であると感じました。利用者や地域社会への姿勢、組織や職員に対するアプローチなどが整
理され、今後の経営において大いに参考になるでしょう。私たちは、この指針を元に老人介護施設
を良い方向に導くために努力し、皆さまにとって安心して利用でき、地域社会に貢献できる施設を
めざしています。
私自身はまだ経験が浅いかもしれませんが、地域社会に貢献し、職員と共に成長していくことを
心から願っております。
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