日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.90
令和5(2023)年10月1日
(本メールマガジンは毎月1回1日に配信しています)
【もくじ】
1) 今月のチェックリスト
:令和時代の福祉経営への焦り
2) 時事/用語解説
:認知症基本法成立とその理念実現に向けて
3) 会員リレーコラム
:ダイバーシティーを楽しむ
4) お知らせ
:実学講座(オンライン)スポット研修第3回の開催(11月7日)
*本号本文は約3,410文字です。
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1) 今月のチェックリスト
「令和時代の福祉経営への焦り」
□範囲・規模の経済性を正確に認識していますか
【解説】
厚生労働省は2017年に地域医療連携推進法人制度を、2022年に社会
福祉連携推進法人制度を立ち上げた。これは今まで1法人1施設を進
めて来た方針から大きく転換を果たし、福祉施設士の福祉経営・管
理の能力を最大限発揮することが可能となる時代が来たと考えている。
現在では18法人が認可され、九州の県社会福祉協議会から社会福祉
連携推進法人立ち上げに関する初の”旨み”としての補助金も打ち上げ
られたところだ。筆者が社会福祉連携推進法人を学ぶ中でヒアリング
を行った際には職員研修、防災対策、BCP等での連携を促進している
法人が多い印象である。一足先に制度化された地域医療連携推進法人
の好事例では亀田病院グループの社会福祉法人が運営している房総
メディカルアライアンスが挙げられる。同法人では二つの病院を運営
し薬剤購入の統一化等により約1億円の経費を削減することにつながり、
病床転換についても促進することができ新型コロナウイルスにも地域
として素晴らしい対応をしたことでも知られている。これがまさに規模
の経済性を発揮している事例である。一方、範囲の経済性を飲食店で説明
すれば、夜のみ営業するバーがお昼にお弁当屋さんに調理場や販売スペース
としてのバーを使用してもらうことなどがこれにあたる。つまりどの事業
にも存在するidle time(非創造的時間)の再活用をどう考えるかという問題
にもつながる。経営管理の専門家として施設の保守管理、人材確保に資
するためにも福祉施設の結果としての収支差がプラスとなるように福祉
経営論や経営学の視点から現状を分析することも重要な視点であると考える。
【上記に関連し、分野横断へのお話について】
筆者が委員を務める江戸川区地域自立支援協議会では障がいがある方と
その親御さんが同時に入所できる施設の増設が急務とされた。これは
9060問題への対応でもある。これらの問題に他の類型の施設は無関係
であるのかということについて、まさに類型を超えた各都道府県福祉
施設士会にはその問題について協議し対応案を作ることも可能である
と考えている。実際に筆者の所属法人でも特養の浴槽施設をある種強
化し、障がいがある方への入浴サービスを開始することとした。行政
から委託を受けている施設においても障がいがあるご利用者様が増加
していることからも地域における福祉ニーズへの対応として既に提供
している高齢分野だけでなく、障がいの分野への対応を積極的に行なっ
ていく必要を感じたからである。
福祉施設士として分野を横断すること、そして社会福祉法人の経営を
不断に推し進めていく焦りと必要性を日々感じている。
(執筆:広報委員 東京都 中川 尋史 No.5940)
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2) 時事/用語解説
「認知症基本法成立とその理念実現に向けて」
去る6月14日、国や自治体の取り組みを定めた「共生社会の実現を推進
するための認知症基本法」が参議院本会議にて全会一致で可決・成立した。
認知症基本法は制度や政策に関する基本理念や方針を示すもので、
より認知症を正しく理解し、その人たちに寄り添う内容で取りまとめ
られたものである。認知症になっても希望をもって尊厳のある暮らし
を続けられる社会をめざし、具体的な問題に対応できる法律と制度
となることを期待する。
認知症の人は超高齢社会の進展と共に、2025年に約700万人、65歳以上
の5人に1人がなると予測されている。その6〜7割がアルツハイマー病
とされており、治療薬の「レカネマブ」が神経細胞を傷付ける原因物質
を除去する抗体薬で早期の患者に有効とされ、8月21日に厚生労働省の
専門部会が使用を認めることを了承し、近く厚生労働省は正式に承認
する見通しである。
認知症基本法の目的、基本理念、国・地方公共団体等の責務をまとめてみる。
(1)目的 認知症の人を含めた国民一人ひとりがその個性と能力を十分
に発揮し、相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する社会
(共生社会)の実現を推進。
(2)基本理念 1)全ての認知症の人が基本的人格を享受する個人として
自らの意思で日常生活、社会生活を営むことができる。2)認知症の正しい
知識、正しい理解を深めることができる。3)認知症の人の日常生活、
社会生活上の障壁を除去することで社会の対等な構成員として地域で安全、
安心して自立生活を営めるだけでなく、自己に関わることに意見を表明する機会、
活動に参画する機会の確保を通じ個性と能力を十分に発揮できることができる。
4)認知症の人の意向を十分に尊重し、良質かつ適切な保健医療サービスおよび
福祉サービスが切れ目なく提供される。5)認知症の人のみならず家族等に
対する支援により地域で安心して日常生活が営めることができる。
6)共生社会の実現のための研究の推進により、障害の予防、診断、治療、
リハビリおよび介護方法、社会参加の在り方、他の人々との支え合いながら
の社会環境の整備、その他科学的知見等の成果を広く国民が享受できる環境
を整備する。7)教育、地域づくり、雇用、保健、医療、福祉その他の各関連
分野の総合的な取組として行われる。
(3)国・地方公共団体等の責務等 国・地方自治体は認知症対策を策定・
実施する責務を有する。国民は共生社会の実現を推進するために必要な
正しい知識および理解を深め、共生社会の実現に寄与するよう努める。
政府は、認知症施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他
の措置を講ずる。
行政と政治の信頼回復のためにも、認知症基本法に関わりが深いマイナンバー
カードの問題を整理し、また、障害者と健常者との二分思考から、一人ひとり
違って当たり前、「人は皆同じ」の一元的思考や北欧のようなWelfare(福祉)
からwell being(健康)へ福祉を必要とする一部の人から全ての人の健康へと
の思考について、考え合いたい。
(執筆:広報委員 新潟県 大澤 澄男(No.1030))
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3) 会員リレーコラム
「ダイバーシティーを楽しむ」
当法人は岡山県津山市にある障害者を対象とした就労支援事業に取り組んでおり、
法人内の1施設において20年近く前から余暇活動として希望者を対象にアート
クラブ活動を行っています。 この秋、地域で初の試みとなる岡山県北在住の
心身に障害があるアーティストを対象とした「ダイバーシティー&アートin津山」
に参加することになりました。法人内に実行委員会事務局を置くことにより地域で
アート活動に取り組んでいる団体や個人の方との新たな出会いや交流が増え、
今から開催が待ち遠しくドキドキわくわくしています。
現在、出品に向けて様々なアーティストが作品を通して最大限のパフォーマンス
を発揮できるように「映える」展示の仕方を模索しています。
また、社会福祉法人に求められる公益的な取り組みの視点においても地域で未開発
の福祉ニーズにチャレンジすることで、今後の地域福祉充実の一助になるものと
期待しています。「ダイバーシティー」がくれた課題を楽しみながら、
支援の多様性を学び、作品展開催の日を笑顔で迎えたいと思います。
(執筆:岡山県 高橋 恵子さん(No.4859))
→次回は 沖縄県 玉城 政さん(No.4192)の予定です。
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4) お知らせ
「実学講座(オンライン)スポット研修第3回の開催(11月7日)」
第3回実学講座(オンライン)が、11月7日(火)に開催されます。
人材育成と人事考課について学ぶプログラムです。
詳しくは、本会ホームページ、
http://www.dswi-sisetusi.gr.jp/をご参照ください。
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┏次回は11月1日発行予定
発 行:全国社会福祉協議会
日本福祉施設士会 広報委員会
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連絡先:z-sisetusi@shakyo.or.jp
〒100-8980 東京都千代田区霞が関3-3-2
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