日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.89
令和5(2023)年9月1日
(本メールマガジンは毎月1回1日に配信しています)
【もくじ】
1) 今月のチェックリスト
:保育界の危機管理
2) 時事/用語解説
:不適切保育の全国実態調査公表を考える(2)
3) 会員リレーコラム
:夏休み児童クラブ
4) お知らせ
:実学講座(オンライン)スポット研修第3回の開催(11月7日)
*本号本文は約4,240文字です。
▼―――――――――
1) 今月のチェックリスト
「保育界の危機管理」
□日常に潜む危険について再点検していますか
【解説】
新型コロナウイルスへの対応に追われたこの3〜4年、
保育界では新たに多くの事項が持ち上がり、世の人々
の関心を引き保育現場の職員や運営責任者を悩ましている。
この度2回目の「チェックリスト」執筆にあたり、
このことについて少し整理してみようと思う。
(1) 通園バス置き去り事件
2022年9月5日14時10分頃、静岡県内の認定こども園
に駐車していた通園バスの車内で、園児の3歳女児が意
識を失っているのを職員が発見した。ただちに通報、
病院に搬送されたが、同日15時35分頃に死亡が確認。
女児は午前8時50分頃にこのバスで登園しており、
5時間程度にわたり置き去りにされたとみられている。
通園バスは18人乗りのワンボックスカーで、
運転手を含む2人の職員と6人の園児が乗っていた。
この日は普段の運転手が休みだったため、70代の男性
園長が運転していた(ウィキペディアより引用 一部改変)。
(2) 「不適切な保育」について
静岡県内の私立保育園で、1歳児を受け持つ保育士
3人が園児を倉庫に閉じ込めたり、暴言を吐いたりする
などの行為を繰り返していたことが28日、関係者への
取材で分かった。保育園は一連の行為を「不適切な保育」
と認め、3人を処分するとともに、受け持ちから外したという。
市はこの事態を把握していて、調査を進めている。
関係者によると、1歳児は約20人で、保育士6人で担当
していた。同僚の保育士らが3人に問題行為をやめるよう
に進言したが、その後も続いていたという。一部の保育士
が不適切な行いをしているとの情報提供を受けた保育園が
調査し、8月に一連の行為が発覚。3人を1歳児の担当から外した。
保育園は一連の問題を市に報告。運営する社会福祉法人の
関係者は「不適切な行為があったのは事実だが、担当を変え、
現在は通常の状態に戻っている」と話す。同会は園児をたたく
などの暴力行為の有無について明言は避けたが、
一部に「暴力や脅迫行為もあった」、「幹部が事実を隠そう
としていた」などとの証言があり、市が事実関係を精査して
いる(「あなたの静岡新聞」より引用 一部改変)。
(3) 大阪で2歳の女の子が保育所に預けたと思い込んだ
父親の車の中で死亡したことについて、小倉將信少子化担当
大臣は、保護者に欠席を確認する連絡をしていなかった
保育所の責任は重いとしたうえで、再発防止に向けて検討
を進める考えを示した。
先週、大阪 岸和田市の保育所に通う2歳の女の子が、
保育所に預けたと思い込んだ父親の車の中で熱中症で死亡し、
その後、保育所が来ていないことを保護者に連絡していな
かったことが明らかになっている。
小倉少子化担当大臣は記者会見で「子どもの命や安全を
守る保護者の高い意識は必要だ。一方で、今回のケースは、
保育所が当然やるべき所在確認をしていれば救えた命であり、
保育所の責任は重い」と述べた。
そのうえで「保護者への確実な連絡を求めると、不在の
場合などに保育所に過度な負担を求めるおそれがあること
なども勘案して、どうすれば子どもの命を守れるか、関係
府省と検討したい」と述べた。
一方、政府は、子どもの欠席の確認を徹底することなど
を自治体に求める通知を14日、改めて発出した
(NHK NewsWeb 2022年11月15日より)。
(4) 紙おむつの施設での処分について
令和5年1月23日の記者会見で、加藤勝信厚生労働相は
保育所で使用済みとなったおむつを保護者が持ち帰るの
ではなく、保育所で処分することを推奨する方針を表明した。
厚労省が同日付で自治体に通知した。保護者の負担軽減が
目的で、要望する声が以前から出ていた。
通知では、持ち帰りがなくなれば、使用済みおむつを
子どもごとにまとめる業務が不要になるため、保育士ら
の負担軽減にもなるとしている。
厚労省が昨年10月に一部の自治体を対象に実施した
調査では、公立保育所が施設で処分している自治体では、
民間保育所の多くが同様に対応していた。使用済みおむつ
の保管スペースが課題となっていることも調査で分かった
ため、厚労省は、衛生的に保管するごみ箱などの購入を補助する。
加藤氏は「引き続き保育現場の負担軽減と、子育てし
やすい社会の実現をめざし、取り組みを進めてまいりたい」
と述べている(「電子版 日本経済新聞」より引用)。
(1)は色々な不幸が重なって発生したと思われる事件
であるが、衆目を集め政府も状況の改善のために置き去り
防止装置に補助金をつけるなど迅速な対応を発表。認定
こども園や保育所・幼稚園を運営していく上で、心を配る
べき日常に潜む危険は多々ある。送迎バスの危険のみを捉え
一定期間内にすべての送迎バスに対して対応を迫っている
現状はやや不自然な印象も受けるが、部屋の移動・園外
保育・屋外活動・その他日常起こりうる置き去り案件を丁寧
に想定し、日常に潜む危険について再点検してこそ尊い犠牲
を生かすことにつながるであろう。
(2)は保育現場として虐待を含む不適切な保育が行われた
ことを重く受け止めなくてはならない。関わった保育士の氏名
や顔写真が公表されたことは保育現場にとって衝撃であった
とも言える。(2)の事件をきっかけに全国保育士会を始め
多くの機関・団体がより現在行われている保育の見直しが提唱
され、全国の保育現場で真摯な取り組みが行われるきっかけと
なった。この動きを保育の質の向上につなげていきたい。
(3)・(4)については、子育てや保育を担当する大臣の
発言としてどのように捉えれば良いのかという点で考えさせ
られる事例であろう。保育所に登園していない園児について
保育所が責任を負うか否かという精密な議論を抜きにして
「保育所がしっかりしていないからだ」と言われては立つ瀬
がない。保育所の運営費である給付費は未だに積算方式を維持。
そのこと自体はありがたいことではあるが、年々持ち上がって
くる様々な問題に関してきちんと財政措置が行われているとは
言えない。
紙おむつの保育園での処理についても、急遽紙おむつの保管
施設についての補助金が設けられたが、毎週・毎月かかって
くる紙おむつの処理費については何の手当もされていない。
処遇改善加算など保育所に支払われる経費が増える度に使い
道が厳しく問われ相対的に事業費部分が苦しくなっている中で、
さらなる負担を事業所に強いる結果になっていることを
担当大臣・官庁には知っていただきたいと思う。
(執筆:広報委員 山口県 桂 信一 No.3425)
▼―――――――――
2) 時事/用語解説
「不適切保育の全国実態調査公表を考える(2)」
国は、保育士の働き方改革や児童福祉法改正も視野に、
保育の改善につなげていくには保育士の業務負担の改善が
不可欠として見直しや工夫が考えられる事項を一覧にして
通知した。また、保育事業支援コンサルタント、保育室拡充、
コーディネーターによる巡回支援事業の活用や文部科学省の
幼児教育アドバイザーとの積極的な連携について通知した。
児童養護施設や障害者と、高齢者福祉施設は職員による
虐待の通報の義務付けがされているのに対し、保育所など
の職員による通報義務が法律で定められていないことから
児童福祉法を改正し、虐待に関する制度上の仕組みを整備
する方針である。
保育制度のスタート時は保育に欠ける3歳からの健常な
児童が入所対象であった。現在は0歳児から、障害がある
などの病弱児も対象とされているが、保育の対応は十分
だろうか。保育人材の充足だけでなく、保育カリキュラム、
保育教育内容の改善、専門性向上など新しい時代に対応
出来る保育士の養成が求められている。施設、設備の充実
と改善も急務である。処遇改善、保育報酬アップ、管理
監督専門職の処遇改善が必要である。
「保育に欠ける」の利用要件を「保育を必要とする全
ての児童」としてはどうか。保育短大、専門学校、大学
では「保育を必要とする」とすでに教えている。保育関
係施設のユニバーサルデザイン化、児童家庭福祉司の
制度化を求める。
以上、こども家庭庁が取り組むべき事項は多い。
日本福祉施設士会の果たすべきことは山積みしている。
(執筆:広報委員 新潟県 大澤 澄男(No.1030))
▼―――――――――
3) 会員リレーコラム
「夏休み児童クラブ」
当施設は宮崎県延岡市の中心部に位置する認定こども園です。
隣接する児童館とこども園の保育室を活用して児童クラブ
(学童保育)を行っており、夏休み(延岡市は8月1か月間)
期間は朝から夕方まで、多くの小学生を預り、様々な体験・経験
プログラムを実施しています。
頭を悩ませているのは、その預かる環境です。1人1.65平方
メートル以上というとても狭い最低基準や部屋数もない中、
まだまだ足りていない児童クラブ開設数に申し込み多数の為、
やむなく受け入れを行っている状況となっており、
窮屈な室内で過ごしています。
体調不良の児童を休ませるスペースもなくなるため、申し込み
を断らざるを得なくなり、NHKでも先日、ぎゅうぎゅうに
詰め込んでいる学童保育環境を問題視されている番組が放送され
ていました。この問題は市に訴えていますが、財源問題もあるの
か変わりません。ぜひ国の制度として学校よりも多くの時間を
過ごす児童クラブ環境を児童健全育成の政策として改善して
もらいたいと願うばかりです。
(執筆:宮崎県 國友 弾さん(No.4841))
→次回は 岡山県 高橋 恵子さん(No.4859)の予定です。
4) お知らせ
「実学講座(オンライン)スポット研修第3回の開催(11月7日)」
第3回実学講座(オンライン)が、11月7日(火)に開催されます。
人材育成と人事考課について学ぶプログラムです。
詳しくは、本会ホームページ、
http://www.dswi-sisetusi.gr.jp/をご参照ください。
…―‥―・―――――
◇メールマガジンバックナンバーは以下に掲載しています。
http://sv6.mgzn.jp/pub/mailList.php?cid=S604763
◇お近くの会員でアドレス未登録の方がいれば、
登録を呼びかけてくださいますようご協力をお願いします。
登録・解除・アドレス変更は以下から手続きできます。
http://www.dswi-sisetusi.gr.jp/meruhaikun/index.html
┏次回は10月1日発行予定
発 行:全国社会福祉協議会
日本福祉施設士会 広報委員会
http://www.dswi-sisetusi.gr.jp/
連絡先:z-sisetusi@shakyo.or.jp
〒100-8980 東京都千代田区霞が関3-3-2
電話03-3581-7819
Fax 03-3581-7928
┗━DSWI
|