日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.87
令和5(2023)年7月1日
(本メールマガジンは毎月1回1日に配信しています)
【もくじ】
1) 今月のチェックリスト
:「サービス管理」・「職員の能力開発」
2) 時事/用語解説
:こども子育て支援と安定的財源政策
3) 会員リレーコラム
:日本初の田植え事業
4) お知らせ
:令和5年度施設長実学講座の開催(7月19日、オンライン)
〆切7月3日せまる
*本号本文は約4,200文字です。
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1) 今月のチェックリスト
「サービス管理」・「職員の能力開発」
【解説】
筆者は、本年2月1日号のメールマガジンにおいて「サービス管理」
の一環としての「社会福祉施設における職員の利用者への対応」について、
□ 施設の機能や新たなサービスの検討・・・社会福祉制度の動向や地域特性、
地域住民のニーズ等を把握し、施設の機能や新たなサービスを検討していますか。
□ サービスの内容や規則等の説明の実施・・・利用者又は代理人、家族に対する
サービスの内容や規則等の説明は、資料により分かりやすく説明していますか。
をチェックリストとして示し、A保育園の「乳幼児の犯罪被害防止についての方針
と実施内容(令和4年度改訂版)」を要約したものを紹介し、緊急対応策の構築
について提言いたしました。
当時、全国各地の社会福祉施設では「職員の利用者への不適切な対応」によって
引き起こされた、多くの事故や事件の報道がマスコミをはじめ業界内でも大きな問題
としてクローズアップされておりました。
こうした状況下において、こども家庭庁が「子どもの心身を傷つけるような
不適切な保育」について全国の自治体と施設を対象に行った初めての実態調査が
5月12日に公表されました。
調査は令和4年4月より12か月の期間に、全国1,741自治体を対象に調査を実施し、
1,530の自治体からの回答があり、あわせて全国の22,720の保育所の調査が行われました。
調査結果(要約の一部)は、市区町村が通報などを受けて確認した保育所での
不適切保育は914件で、たたくなどの虐待と確認されたものは90件に上ることが
報告されました。
保育所での不適切保育の内訳(複数回答)については、「子どもの人格を尊重
しない関り」が384件で最も多く、「物事を強要するような関り・脅迫的な言葉がけ」
が337件、「罰を与える・乱暴な関り」が276件、「育ちや家庭環境への配慮
に欠ける関り」が123件、「差別的な関り」が43件、その他111件でした。
このうち虐待と確認されたもの(複数回答)のうち、「心理的虐待」が42件、
「身体的虐待」が36件、「性的虐待」が20件、「ネグレクト」が4件でした。
また、保育所を除く認可外保育施設や認定こども園などの不適切保育は
計402件でした。ただし、不適切保育の定義が曖昧であった影響から施設に
対する調査では回答にばらつきがあり19,603件のうち、0件と回答した施設は
全体の73パーセントを占めていました。
調査結果から、次のような課題が明らかになってきました。
1)現行制度下では、保育施設で虐待が発生しても職員による自治体への通報義務
がないこと。
2)不適切保育が発生した場合、保育所に報告基準や手続きの作成を周知していた
自治体は29パーセント、緊急性を要する深刻な事案の基準や手続きとなると
12パーセントと低く自治体側の働きかけが少ないことで、
報告基準を作成している保育所は少ないのではないか。
3)こども家庭庁が新たに定義したガイドラインでは、
「不適切保育を虐待等と疑われる事案」とし、
さらに今までの虐待の4類型に加え「子どもの心身に有害な影響を与える行為」
が該当するとしました。
4)その他不適切保育が発生してしまう背景には、
保育士の低賃金や労働環境・職員の配置基準の見直し等々の課題が改めて
浮き彫りになりました。
このことから、すべての保育施設で保育者とこどもが安心して過ごすこと
ができる環境整備と不適切保育が引き起こされないための防止策等を早急に
構築しなければならないと思います。以下、改めて前回紹介いたしました
資料「A保育園 乳幼児の犯罪被害防止についての方針と実施内容
(令和4年度版)」を参考に上記の調査結果と比較検討し、
改善に向けた取り組みが望まれます。
□職員の能力開発 職員の課題発見・問題解決能力の伸長への取
り組みを行っていますか。
A保育園では、定期的に各保育室に設置されている「検証用カメラ」を
チェックし、「疑わしいと思われるかかわり方や気になる行為などについて」
録画映像をピックアップして保存し「園内研修」の題材にしています。
問題の発見と課題解決に向けた研修を行うとともに、
改めて不適切保育防止に向けた人権擁護のためのセルフチェックリストを活用し、
全職員がセルフチェックの実施を含め、基本的な保育に関する認識の共有を
深めることができており有用な手段となっています。
同時に、こうした研修やチェックを積み重ねることにより保育者にとって
特に必要とされる予知・予見能力の醸成にも繋がるのではないかと思料されます。
参考になれば幸いです。
参考・引用文献等:『施設長のための業務チェックリスト 日本福祉施設士会編』
全社協出版、こども家庭庁「保育所等における虐待等の不適切な保育への対応等
に関する実態調査」(令和5年5月12日)
(執筆:広報委員 東京都 田村 惠一 No.1029)
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2) 時事/用語解説
「こども子育て支援と安定的財源政策」
『社会福祉研究(第146号)』の「こども関連施策の進展」で畑本裕介
同志社大学教授がこども家庭庁等の課題について、問題点の指摘として
幼保一元化の先送りにふれ、文部科学省の所管にまで踏み込んでいない
ことは最大の懸案だと書いておられる。岸田首相の「教育と福祉は相互
関連する側面で相互調整、連携が施策の充実、質の向上になる」との
国会答弁にもかかわらず、何故かどこでも問題点としてふれられてきた。
かつてイギリスではこの両分野をつなぐレベルの組織を作ったように思うが
参考にしないのだろうか。このところが最大の問題点ではないが、
新しい子育ての中心課題ではないか。さらに合計特殊出生率過去最低の1.26、
東京1.04などへの少子化対策の根本は市民として保障される「幸福」主権者
としての「いのちの輝き」、この国の未来が私たちにも、子どもたちにも
明るいものだと信じられなければ、厳しい子育てに取り組もうとするだろうか。
政府は「少子化対策方針案」を公表したがその大前提が問われているのではないか。
子育て支援と財源政策の論点として、
(1)国際的に大きく見劣りする子育て支援
GDP比は日本は1.56%でスウェーデン3.40%、ドイツ、フランスも2%を超えている。
(2)育児の社会化とは言わない国
介護の社会化は定着しているが、育児の社会化は公式には言われていない。
子育ては家族責任が求められ続けている。
(3)家族責任論をめぐって親の扶養義務は「生活保持義務」で家族への
「社会的支援」が必要であるのに不十分である。子ども手当の所得制限などがある。
(4)充実を妨げる財源の制約
子育てのための安定財源、徹底した歳出改革、今までやって来なかったので
可能と言うのだろうか。デンマークや北欧の徹底した国民目線の改革を参考としてほしい。
「支援金制度」を作り企業や個人が負担すると言う。それでも不足した時は
「こども特例公債」と一般の国債と区分するとしているが、
やはり先送りの将来世代への負担となる。会計検査院の毎年の発表などは北欧などでは
驚きでしかない。大学の研究者らによる子育て支援連帯基金構想の租税負担投入の
保険制度も参考となる。
(5)「骨太の方針」と安定財源の確保に向けた主な論点
負担を先送りしない。安定的財源確保。有効性や優先順位。
公平性と広い負担。デンマークは社会保険はなく全て租税。
社会保険方式をとるべきか。合せて「搬出金方式」も必要か。
消費税率引き上げも政策課題となるだろう。
妊娠、出生から終末までの幅広い支援をする福祉関係者が集うわが
日本福祉施設士会は、それぞれの対象年齢、福祉分野からの提言をもっと
積極的に行い専門職団体としての存在感を示すべきではないだろうか。
(執筆:広報委員 新潟県 大澤 澄男(No.1030))
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3) 会員リレーコラム
「日本初の田植え事業」
現在、群馬県中之条町ボランティア連絡協議会(事務局:社協)が行う
「中之条みらい米プロジェクト」に東京都福祉施設士会も参加しています。
中央福祉学院のふくし未来塾の発表の一環としてその理念に共感した地元の
方々と話し合い「みらい米」という名前をつけていただきました。
5月27日に行われた田植えには、地元ボランティアの方々、
そして当会理事3名と賛助会員1名で参加させていただきました。
特に印象深かったのは、東京では体験できない大規模な機械を使用した
田植えや自然体験を経て参加した皆さんの表情の豊かさでした。
現地の社協 樋田会長の「美味しいお米を独居高齢者や福祉施設に届けたい」
という想いや地域の方々の活動に触れて、社会福祉法人から地域振興を
進めていこうと、設立された当会 地域振興部会の活動を体感して
頂く機会ともなりました。参加された皆様の嬉しそうなお顔を見て、
中之条町に来てよかったと思いました。
社会福祉法人の横の繋がりを構築していくこと、私たちはSNSやネット
の力を活かして素晴らしい活動を知ってもらう、そして熱い思いを広げて
いく中で地域に貢献し、いつか皆様のお手元にみらい米が届く日を
楽しみにしています。
(執筆:東京都 中川 尋史さん(No.5940))
→次回は 福井県 田中 淳さん(No.5394)の予定です。
4) お知らせ
令和5年度施設長実学講座の開催(7月19日、オンライン)
〆切7月3日せまる
令和5年7月19日にオンラインにて、施設長実学講座「決算書を読み解く
(前期/基礎編)」を開催します。会計実務の未経験者を対象にしています。
申込み〆切は7月3日です。詳しくは、本会ホームページ、
http://www.dswi-sisetusi.gr.jp/をご参照ください。
…―‥―・―――――
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http://sv6.mgzn.jp/pub/mailList.php?cid=S604763
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┏次回は8月1日発行予定
発 行:全国社会福祉協議会
日本福祉施設士会 広報委員会
http://www.dswi-sisetusi.gr.jp/
連絡先:z-sisetusi@shakyo.or.jp
〒100-8980 東京都千代田区霞が関3-3-2
電話03-3581-7819
Fax 03-3581-7928
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