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配信日:2023/02/01
日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.82
日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.82
令和5(2023)年2月1日
(本メールマガジンは毎月1回1日に配信しています)

【もくじ】
1) 今月のチェックリスト
 :サービス管理
2) 時事/用語解説
 :医療・介護分野でのDXの可能性を求めて
3) 会員リレーコラム
 :野球型組織からサッカー型組織へ・・・

*本号本文は約5,300文字です。

▼―――――――――
1) 今月のチェックリスト
 「サービス管理」

【解説】
 昨年の12月に、筆者が関わりをもっている複合型社会福祉施設(二つの保育園・養護老人
ホーム・特別養護老人ホーム・障がい者通所施設)を経営している社会福祉法人と、三つの
保育園を経営する社会福祉法人の定例の理事会が開かれ、それぞれの法人からの事業報告書
の提示と説明が行われました。
 この報告の中で、二つの法人から共通して問題提起されたこととして、3年間にわたり新型
コロナウイルス禍にあっても一瞬たりとも事業を止めることなくきめ細やかな感染対策に追
われながらも利用児・者や家族・地域へ懇切丁寧に対応せざるを得ない状況であることとと
もに、近年、社会問題化している「社会福祉施設における職員の利用者への不適切な対応」、
いわゆる「虐待問題への対応」でした。
 現在のところ両法人ともに、これらの問題は発生してはいませんが昨今の状況下では、い
つどこで何が起こるかわからないという不透明な部分もみられていることから、「防犯カメ
ラ」や「監視カメラ」の設置を検討し、すでに設置している施設もみられています。
 そこで今回の理事会で議論されたことは、多くの施設ではすでに「防犯カメラ」の設置は
されるものの「監視カメラ」の設置については未設置のところもみられています。このため
上記の問題に対して、どのように取り組むかが議論の中心的課題でした。
 この二つの社会福祉法人ともに創立60年以上にわたり、地方自治体や地域住民とのかかわ
りの中で、かたい「信頼関係」が醸成され、ある利用者家族にとっては親子2代や家族3代
にわたってかかわりを持つケースもみられています。また、これらの利用者からは施設に対
して絶対的な信頼のもと感謝される言葉も多く聞かれている中で、ある役員は「利用者・家
族からも信頼されている中で長年、事業を継続できていることから、監視カメラをつける必
要はない」、また別の役員は「社会福祉事業は利用者・家族との信頼関係のもとに結ばれた
中で行われている事業であるため、心情的には設置したくないが、何らかのトラブルが発生
した場合の状況証拠のために、必要性に迫られているのではないか」と、さらに弁護士であ
る役員は、「設置したくないという思いに対して、心情的には理解できるが、いざ裁判と
なった場合は何はともあれエビデンスが必要であり早急に設置の検討が必要ではないか」と
いう意見が出され、設置の検討が行われることになりました。
 二つの法人の中で一か所の保育園(開設して10年経過)が「防犯カメラ」とともに「監視
カメラ」を設置しており、この活用方法等について利用者家族に対して『乳幼児の犯罪被害
防止についての方針と実施内容』についての文書をもとに周知・徹底を図っています。本稿
では「施設長のための業務チェックリスト」のうち以下の項目について、上記文書を一部抜
粋(実際の資料はA4で4ページ)したものを紹介し解説を加えます。

□施設の機能や新たなサービスの検討
 社会福祉制度の動向や地域特性、地域住民のニーズ等を把握し、施設の機能や新たなサービ
 スの検討をしていますか。
□サービスの内容や規則等の説明の実施
 利用者又は代理人、家族に対するサービスの内容や規則等の説明は、資料 によりわかりや
 すく説明していますか。

【資料】 A保育園 乳幼児の犯罪被害防止についての方針と実施内容(令和4年改訂版)
1. 方 針
   保育所保育指針(厚生労働大臣告示)、特に各条文に定められた保育所の使命及び倫理
  に基づき、保育園での日常生活における乳幼児の犯罪防止に関連するすべての事業につい
  て、常に「子どもの最善の利益」をベースに総合的に判断する。犯罪被害防止の要点を踏
  まえつつも、「保育活動や子供の言動に対する過剰な抑止」「保育士をはじめとする職員
  の職務の過度な制限」「固定的な価値観による偏向教育」につながることのない幼児教育
  に努めるものとする。
   根拠規定として、保育所保育指針第1章―1保育所の役割・第2章―4保育全般にかかわる
  配慮事項・第5章―2施設長の責務と専門性の向上に基づき記述しています。
2. 実施内容
  (1)乳幼児が保育園職員の虐待、性加害、差別により危害を加えられる事件を抑止すること
   を目的の一部として下記の対策を実施する。
   〇職員の指示や意向に従わせることを目的とした、乳幼児に恐怖心や疎外感を与えるよ
    うな保育活動または言動を厳禁とする。
   〇職員が人的保育環境としての自覚を保つために「自己評価チェックシート」を定期的
    に作成・提出するシステムを置く。
   〇職員が他職員の言動の異常に気がついた、または疑念を感じた場合に「お問い合わせ
    フォーム」「気づきリポート」により匿名でも園長に報告できるシステムを置く。
   〇各保育室に「検証用カメラ」を設置して、常時録画する。(保存期間7日間)、ただし
    常時監視はせず、録画映像の検証、保管も園長及び一部職員に制限する。
  (2)乳幼児が家族からの虐待・性加害・差別により危害を加えられる事件を抑止することを
   目的として対策を実施する(具体例は略)。
  (3)乳幼児が虐待・性加害・差別により危害を加えられる事件を自らの対応で回避できるよ
   う、また乳幼児自身が他者に危害を加えるような大人にならないよう下記の教育を実施
   する(具体例は保育所保育指針等による)。
  (4)乳幼児が保育園職員の虐待・性加害・差別により危害を加えられる事件が発生した場合
   に、保育園は以下について対処する。
  【発見・検証】
   〇発見者は職員同士の指摘や指導で済ませることなく、園長への報告を必須とする。
   〇報告を受けた園長は速やかに「検証用カメラ録画映像の保存・検証」「証拠・証言の収
    集」により客観的事実の確認を行う(以下、危害等が確認できた場合、行政当局への通
    報を必須とする)。
  【検証の結果、事件であることが判明した場合】
    〇園長は判明した直後に当該児童の保護者、続いて行政当局、法人理事会、すべての職員
   に検証結果を報告する。
    〇検証の結果が刑法に違反する可能性がある場合、園長は警察に通報する。
    〇園長は当該児童の個人情報を除く事件の検証結果並びに再発防止策の検討結果を当該
    児童の保護者などの意向によらず、すべての利用者に報告する。
  ※法人内では就業規則に定める懲戒規定を厳格に適用することや公益通報者保護制度に基づ
   く通報者等に不利益な扱いを受けないようにする。

    乳幼児の安全と将来に対する責任の一端を担う施設として、保育園は乳幼児の犯罪被害
    防止に取り組む義務を負っています。子供の発達過程と「保育の専門性」、配置基準や
    補助金の不足、長らく「女性の仕事」とされてきた歴史的経緯など、この問題と簡単に
    切り離すことができないテーマも数多くありますが、どのような問題に対しても常に
    「子どもの最善の利益」をベースに物事を判断することで、乳幼児の安全と将来を担保
    することができるように努めます。
                                令和4年12月〇日
                            A保育園々長 〇 〇 〇 〇

 このように、社会情勢の動向や変化に対応した対策の必要性はますます強く要請されてい
ます。さらに児童福祉施設業界においては、昨年12月23日付で厚労省子ども家庭局より「児
童福祉施設等における業務継続計画(BCP)」策定の通知が出され、いまだ策定していない
施設は早急な対応にせまられています。参考になれば幸いです。

参考文献:施設長のための業務チェックリスト 日本福祉施設士会編全社協
     保育所保育指針解説 平成30年3月 厚生労働省編フレーベル館
     A保育園「乳幼児の犯罪被害防止についての方針と実施内容」保護者向け資料

(執筆:東京都 田村 惠一 No.1029)

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2) 時事/用語解説
 「医療・介護分野でのDXの可能性を求めて」(前編)

 後期高齢者の増加、もつ幸福感、生き方の多様性から医療と介護を連続する一体のものと
して求める人たちが増加している。
 DXとはDigital Transformation のことであり、「デジタル技術によって、ビジネスや生活
の形・スタイルを変えること」である。
 医療DXとは保健・医療・介護の各段階で発生する情報やデータを全体最適された基盤を通
して、保健・医療や介護関係者の業務やシステム、データ保存の外部化・共通化・標準化を
図り、国民全体の予防を促進し、より良質な医療やケアを受けられるように、社会や生活の
形を変えることと定義できる。
 その具体的内容は、疾病の発症予防、被保険者資格確認、診察・治療、薬剤処方、診断書等
の作成、診療報酬請求、地域医療連携、研究開発である。
 少子高齢化が進むわが国で、国民の健康増進、切れ目のない質の高い医療の提供に向け医療
のデジタル化を進め、保健・医療情報(介護を含む)の利用を積極的に推進していくことは非
常に重要である。
 今回の新型コロナウイルス感染症流行で認識された課題として、平時からのデータ収集の迅
速化、収集範囲の拡充、医療の「見える化」の推進等により次の感染症危機での迅速に対応可
能な体制の構築の急務があげられる。
 新潟県は医療圏域ごとに「基幹病院」と言う高度医療を地域ごとに展開する方向を現在進行
中である。筆者は魚沼基幹病院に入院し、高度医療の治療を受けていて、「魚沼地域医療連携
ネットワークシステムうおぬま・米ねっと(まいねっと)」に加入し、カードを持っている。
魚沼地域の医療と介護を支える仕組みで、万一の救急搬送時も安心、同じような検査を省略、
医療と介護の連携があり、訪問看護や介護施設も参加し、退院後の介護現場との連携もとれる
情報共有システムとなっている。NPO法人魚沼地域医療連携ネットワーク協議会は、魚沼基幹
病院内に事務局があり、利用する医療機関や施設が増えたときは窓口にカードを提示すること
で連携が進むことになっており、加入は無料。
 基本情報、処方・調剤情報、病名、臨床検査情報、画像検査情報、紹介状、連携パス、介護
情報を共有している。
 医療・介護分野での魚沼地域でのDXシステムだが、連携機関とその運用人材への信頼が大前提
でマイナンバーカードの普及と同じようなことが求められている。デンマークでは「あなたによ
い番号を作って差し上げます。」と言うような加入給付金付きなどではなく、正しく「個人識
別カード」と行政の合理化、スリム化のためで、推進は「行財政の厳しい改革計画」と一体と
なっていて国民に政治と行政が信頼されているところから進められている。
【3月号につづく】

(執筆:新潟県 大澤澄男(No.1030))

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3) 会員リレーコラム
 「野球型組織からサッカー型組織へ・・・」

  埼玉県 大野 操さん(No.3489)

 ワールドカップは、世界中のサッカーファンを熱狂させました。大谷選手は二刀流で野球ファン
を魅了しました。野球とサッカーを施設の組織の視点で考えたいと思います。
 野球型組織は一人の選手に守備位置や打順が決められていて分業体制です。それぞれの守備範
囲は決まっています。責任は選手全員にありますが、ひとりひとりの打率や守備が結果に大きく
反映されます。
 サッカー型組織もそれぞれの選手にポジションが決められていますが、状況に応じて変化しま
す。その役割は臨機応変に変わっていき、プレーヤーのその場その場の意思決定が重要になりま
す。選手全員が一丸となってゴールを狙う一体感がサッカーにはあります。どちらにも良いとこ
ろはあります。
 サッカー型組織を病院に例えると、心肺停止状態の患者さんが救急搬送されたとします。心臓
外科医・看護師・呼吸器担当など、それぞれの専門家が駆けつけ、自分の仕事はどこからどこま
でで、いつ手を出していいか分かっています。このような病院スタッフの組織が「サッカー型組
織」です。ソニーはこの方式をビデオの開発部門にいち早く導入し、研究開発の初めから、設計
者・製造者・販売担当者が関わり成功したと言われています。
 私たち介護や保育の分野ではどうでしょう。職員同士が現場で臨機応変に対応し、職員間の連
携(パス回し)が出来ているでしょうか。そして、施設を利用する方々の幸せ(ゴール)につな
がっているでしょうか。職員同士の情報が伝わっていない。パスがつながらないことや、自分た
ちの仕事の使命が分からない。つまりゴールが見えていない、なんてことはないでしょうか。も
う一度チームプレーの大切さを考えたいと思います。

→次回は 埼玉県 鈴木 市郎さん(No.5236)の予定です。

…―‥―・―――――
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