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配信日:2022/12/01
日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.80
日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.80
2022.12.1
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★ 令和4年度施設長実学講座に参加しましょう
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もくじ
1) 今月のチェックリスト
 :施設内でコロナクラスターを3度経験して得た知見
2) 時事/用語解説
 :全世代型社会保障改革を考える
3) 会員リレーコラム
 :仕事を通して得られる充実感
4) 事務局よりお知らせ
 :令和4年度研修会(オンライン)の開催

*本号本文は約4,510文字です。

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1) 今月のチェックリスト
 「施設内でコロナクラスターを3度経験して得た知見」

 【はじめに】
 今年も残すところ一か月となりました。師走に入ると様々な行事が目白押しです。冬至
やクリスマス、大掃除、松飾り等正月の準備、加えてお歳暮や年賀状など今月下旬にはや
らなくてはならないことが詰まってきます。師が走ると言うくらいですからこれまでの忙
しさに輪をかけたような日々となるでしょう。時間があっという間に過ぎ去っていくこと
が目に見えています。
 思い返せば、今年も年始から今日に至るまで、コロナ一色の日々でした。干支がどうと
か、どんな年だとか思いを巡らせる前に終始感染対策に追われてきました。それほど躍起
になって水際戦略を進めていても、私たちの特別養護老人ホームでは1月に利用者2名のコ
ロナウイルス感染者が発生し、4月には利用者19名・職員8名のクラスター、8月下旬に利
用者22名・職員15名のクラスター、そして11月初めに再び利用者・職員の感染が発覚し、
現在クラスターの収束に向けて奮闘中と、今年は4度の感染者の発生と3度のクラスターを
経験してしまいました。感染経路は短期入所生活介護(ショート)利用者からが1回、残
りの3回は職員が外部から持ち込んだものです。
 現在、全国的には第8波が押し寄せてこようとしています。今冬のコロナ戦線は、7波が
完全収束するのを待たずに大きな波になりそうです。
 死亡率や重症化率は積極的なワクチン接種によって低減され、感染しても治療薬によって
概ね通常の生活を取り戻すことができますが、一旦感染してしまうと利用者は隔離と個人
防護具(PPE)による対応、職員は感染発覚を0日として7日、都合8日間の自宅待機となっ
てしまうため、現場の疲弊に加えて人員を回していくことに難渋し、24時間利用者をカバー
する施設においては死活問題となります。
 何度経験しても施設内集団感染は避けたいところですが、無症状で潜伏期間中の職員の
体調管理にも限界があります。この度、本コーナーを通じて、私たちが体験したクラスター
から得た知見をいくつかご紹介したいと思います。

【いくつか得た知見】
 当法人では約2年半前に、新型コロナウイルスの感染力の強さに鑑み、感染者が発生した
場合のゾーニング(分離・区分け)の方法や職員出退勤の動線、ケア展開の選別(感染拡大
防止のためにケアの必要最小限化)、食事の提供体制や汚物や洗濯物の廃棄の流れ、パーテー
ションやビニールカーテン、衛生材料の備蓄等、様々な検討の下にシミュレーションも行って
いました。しかし、いざというときに物品が点在しており、現場の全体把握と感染者、濃厚
接触者の同定に時間がかかってしまい、速やかなゾーニングができませんでした。それぞれ
の施設においてシミュレーションを行ったら、衛生材料やパーテーション等を速やかに準備
できるよう一まとめにした上で、「レッドゾーン」、「イエローゾーン」、「グリーンゾー
ン」に区分けし、使用後のPPEを廃棄するための簡易ゴミ箱もあらかじめ用意しておいた方
がよいと考えられます。また、PPEの装着訓練を日頃からしておき、何のための防護かを理
解することも大切です。
 その上で、
(1) ショート利用者のリスク管理上、入所時の独自抗原定性検査のみでは担保できない(抗
   原定性検査では精度として熱発等がない無症状の場合に陽性となることがほとんどない)。
(2) ショートなど外部からの受入れに際しては、利用前に受けた他事業所の感染動向につい
   ても情報が共有できるようケアマネジャーを中心に事業所間連携を図ること(即時対応
   に務める)。
(3) 検査体制(抗原定性検査、PCR検査)を充実させておくことが初動を機敏にすることに
   繋がる。
(4) 感染者が発生したら感染区域に従事する職員とそれ以外のフロア(あるいはユニット)
   勤務者の出退勤時の動線を分け、他フロア(あるいはユニット)には決して派生させない
   ことが重要。
(5) レッドゾーン(感染区域)の範囲はできるだけ狭く設定する。ゾーンを広くせざるを得
   ない場合は、グリーンゾーン(清潔区域)をレッドゾーン内にも一か所設けるようにする。
(6) 職員用トイレはグリーンゾーン内に配置する。
(7) PPE(個人用防護具)装着の状態で、ポケット内のナースコール対応用のPHSや部屋の鍵
   等を取り出さない。
(8) ファーストケースでは騒然となり混乱を来しやすいため、指示命令系統を口頭だけではな
   く可及的速やかに書面で交付する。また、クラスター対策は、濃厚接触者の同定と潜伏期
   間の設定から長期戦(約3週間はかかる)となるため、短期集中的にあれもこれもと無理を
   して頑張りすぎないことが肝要。
(9) 濃厚接触者の同定について、マスクなし1m以内15分だけでは不十分で、感染者と同室の
   者、食事や生活の上で同席した者は濃厚接触者とする。その上で、まずゾーニングと動線
   の確定:レッドゾーンは感染者と濃厚接触者のゾーンであること、イエローゾーンはレッド
   ゾーンで着用していたPPEを脱ぐところ、グリーンゾーンはPPEを着用するところといった
   明確な区分け。
(10) 使い捨ての食器、スプーン(先割れのものより普通のスプーンとフォークがよい)、紙コッ
   プ(10mlよりも200mlが便利な上にトロミ(粘稠)材の使用がわかりやすい)
   も事前に用意しておく。
(11) クラスター発症時には、保健所、行政への状況説明に加えて治療薬の同意書を得るために家
   族等に連絡を行わなければならない。電話で一人ひとり行うにはたいへんな労力と時間がか
   かるため、メールやSMS、メッセージアプリ等の一斉送信ツールを講じておくことが大切
   (それでも同意に関しては一人ひとり聴取することが求められる)。
(12) 保健所とのやり取りでは情報提供のためのフォーマットがあるため、あらかじめ情報を整理
   しておく(氏名、生年月日、年齢、要介護度、住所、基礎疾患、発症日、隔離終了予定日)。
(13) 利用者の延命についてあらかじめ意向調査をしておく(ACP ; Advance Care Planning「事前
   指示書」への取り組み)。
(14) 主治医、嘱託医、薬局(治療薬)についての情報共有のためにあらかじめホットライン(情
   報共有ツール)を講じておく。
 などがチェックポイントとなります。
 これらに積極的に取り組んで、いざ事業所内で感染者が発覚した際でも、迅速な初動に結びつけ
ていただければ幸いです。

(執筆:広島県 松林克典(No.4402))

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2) 時事/用語解説
 「全世代型社会保障改革を考える」

 デンマークのノーフィン・フォインコーレを2013(平成25)年に訪れてから9年になる。パス
ポートの期限は90歳まであるが、老いの進行の再訪に不安をもっている。
 ノーマリゼーションの成立過程に関する研究序説を書き、デンマークの民主主義とも重なるこ
とを知った。N・F・グルトヴィとクリステン・コルではじまり、ハル・コックの近代への適用と
バンク・ミケルセンの1959年法成立と世界への普及で民主主義の本質を学んできた。
 「金と票集めと任期中だけの視野」を改めることが「全世代型社会保障改革」の前提だと介護
福祉士養成校後期講義のはじめに社会保障論の障害福祉で教えている。
 借りもので与えられた民主主義でないそれが太古の「憲法十七条」で「和の貴さ」と述べられ
ている。「和とはやさしく美しいこと」、「わ」と言う楽器、大小管を並べたもので調和した
音を奏でる。「いろいろな意見、発言を切り捨てず調和させて、さらに高い考えにまとめていく
ことが「和」だと言っている。民主主義の本質を教えている。このことを幼児期から義務教育の
中で逃げず、ぶれずに教えていく教育改革を「子ども家庭庁発足」に当たって進めていくことが
「豊かで幸せな国づくり」へのスタートではないか。
 「全世代型社会保障改革」は世代間の負担のやりとりから議論すべきではなく、その大前提条
件として、
1) 政治、行政の信頼回復
2) 行財政の徹底した改革と削減
3) 国負担と各世代間の分担・比率の決定
4) 税負担のあり方、企業と個人、直接税と間接税、税率のあり方
5) 幼児期、義務教育の重点化、あり方
6) 民主主義教育の徹底強化、主権在民、参政権の教育
 を考えるべきである。
 国民一人ひとりに、「幸せな国づくり」のための参加意識を育成し、こうした条件下の基本か
らの検討こそ、求められているのではないだろうか。

(執筆:新潟県 大澤澄男(No.1030))

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3) 会員リレーコラム
 「仕事を通して得られる充実感」

  高知県 甲藤真敬さん(No.5409)

 私は大学を卒業してメーカーに就職しました。そこで3年間システム開発に携わって得られた
ものは、納期を守るための長時間の残業経験と高額の超勤手当でした。定年まで、この生活は
できないと思い故郷に戻った2000(平成12)年、当時世間で話題になっていた介護保険制度か
ら福祉業界に興味をもち、介護職員として就職しました。
 気が付いたら20年が過ぎ、仕事も施設長業務となりましたが、職責を全うしているかどうか
自問の日々です。直接処遇職員の頃は、利用者様や利用者様ご家族より、仕事として当然のこ
とをしただけで感謝の言葉をいただくことが多く、そのたびに嬉しく思いました。
 現在は管理職のため、利用者様のサービスの質向上以外にも職員満足の向上や経営の安定化
も検討する必要があります。そのため感謝の言葉をいただく機会は少なくなりましたが、経営
目標の達成などに職員が一丸となって取り組み、目標が達成された時は何事にも代えられない
充実感が得られます。この充実感があるから、モチベーションを保って仕事ができると思って
います。

→次回は 高知県 藤田祐伸さん(No.4936)の予定です。

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4) 事務局よりお知らせ
  日本福祉施設士会主催の下記研修会の参加申込を受付中です。「開催要項」は本会ホーム
ページよりダウンロードができます。福祉施設士として重要なテーマを考える機会になります
ので、ぜひご参加ください。
  
○令和4年度施設長実学講座(第4回)「SDGsと福祉施設の実践」(オンライン研修)
 内 容:講義と実践事例からSDGsの現状や実践を学びます。
 開催日:令和4年12月16日(金) 
 ※令和4月12月9日(金)〆切

○令和4年度施設長実学講座(第5回)「施設におけるリスクマネジメントの実践」(オンライン
研修)
 内 容:講義と事例、グループワークにより、施設長・管理者として必要なリスクマネジ
メントを学びます。
 開催日:令和5年1月30日(月)
 ※令和5月1月23日(月)〆切

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発 行:全国社会福祉協議会
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