日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.78
2022.10.1
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★ 赤い羽根共同募金運動が始まります
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もくじ
1) 今月のチェックリスト
:人材育成と歴史
2) 時事/用語解説
:地域共生社会をめざしながらの「孤立・孤独」への取り組みをめぐって
3) 会員リレーコラム
:ぶらりに学ぶ
*本号本文は約3,080文字です。
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1) 今月のチェックリスト
「人材育成と歴史」
当法人は、明治35(1902)年に大阪養老院として大阪市内で創立され、今年の12月で
創立120周年を迎えます。創設者の想いは、『目の前に困っている人がいる。その事から
目を背けることはできない。』
この想いを明治・大正・昭和・平成、そして令和へと時代が変わり、社会が変わっても創
設精神はこれまでも、またこれからも職員一人ひとりに伝えています。
業務改善のポイントは時代と共に変化し、同時に職員(人材)の育成のあり方もそれに
合わせて改善を重ねてきました。当法人のこれまでの長い歴史の中で、制度・法律の改革、
時代時代の人々の想いの変遷を通し、また生活様式(家族・施設それぞれ)も激変する中
で、私たちが取り組んできたほんの一部をご紹介させていただきます。
【人材育成のポイント】
1 年間研修会において、まず各事業所(法人全体・各業種グループ)で最初の研修項目は
『法人の歴史・理念』に関する研修を開催します。
当法人の場合ですと120年前に大阪養老院はなぜ創設され、その創設の想いはどのような
ものであったのか、120年間続いているその想いを皆で学習します。ここで重要なのは正職
員のみでなく、短時間勤務の職員にもどう理解を深めてもらうかテクニックを要します。
歴史の中で多くの事件や事故(戦争を含む)が発生し、経営不振となった時にどのような
方法・想いで職員たちが一致団結して再建に取り組んだのかについて、情報の共有を図って
きました。また、経営不振とまでいかなくても日々の『苦情・事故・ヒヤリハット等』を法
人全体の各事業所の職員が情報の共有化をどのように図っていくかが重要です。
2 平成12(2000)年4月、介護保険制度導入時から『人事考課制度』を導入、本格的な導
入までは3年の月日を要しました。その理由の一つに外部(経営コンサルタント等)から一方
的に提示された評価基準を採用するのではなく、何年もかけて新人・中堅・幹部、そしてコン
サルタントを交えて皆で『基準』を作ることを最重視しました。
仕事(介護業務等)を点数化することは大変難しいですが、点数化することによって自分の
評価が他者からなされ、評価される事によってキャリアアップ意識向上や働きがいを生み出す
ことができました。決して同期・学歴・他人と比較することなく、個々人が自身の知識・意欲・
能力をどう発揮しているか、その事に視点を当てることが大事だと思います。
能力開発には教科書が必要です。人それぞれの教科書が多数存在しますが、当法人の基本的
教科書は120年に至る『記念誌』です(80年誌より10年毎に発行しています)。その中には、
長い間積み重ねられてきた経験や職員たちの記憶が残されています。
これらが繰り返される事によって、『業務の確認等』が永続されるものと思われます。
(執筆:大阪府 岩田敏郎(No.911))
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2) 時事/用語解説
「地域共生社会をめざしながらの「孤立・孤独」への取り組みをめぐって」
「月刊福祉」2022年2月号、「社会福祉研究」第144号が、「孤独・孤立」を特集してい
るのは、われわれ福祉関係者がこのことに、より強い関心を持ち近接領域と共に取り組み、
実践を具体化して欲しいと示唆していると思い、再度取りあげてみたい。
ポイントの確認から始めよう。孤独・孤立対策は2021(令和3)年から政策的関心が高
まった。背景に新型コロナウイルス感染の拡大等で以前以上に人と人の接触機会が減少し、
しかも長期化することがあった。昨年2月に政策担当大臣が任命され、12月に「重点計画」、
孤立対策推進会議の決定、今年4月に全国調査結果の公表で「孤立であると感じる」、の回
答が36.4%と多く、しかも若年層に目立ったことがわかった。
「孤独は主観的な概念、孤立は客観的」であるが「孤立・孤独は人生のあらゆる場面で誰
にでも起こりうるものであるが、調査結果でとくにこれからの社会を支える若年層に多いこ
と。」が問題である。
人々の孤立や孤独、社会的排除や摩擦から援護し、社会的な「つながり」を再構築する
ソーシャル・インクルージョンのための社会福祉、Well-being をめざす幅広い関係団体の
連帯による緊急支援策を「孤独・孤立対策担当室」が中心として取り組むことになっている。
われわれ多職分野が集う種別横断の「日本福祉施設士会」も真剣に福祉領域以外のNPO
や地域住民などや他領域とも連帯することが不可欠との認識が求められる。自治体レベルの
「福祉の総合相談窓口」への協力も必要となる。発生予防的な場としての人と人のつながり
や生活を支える場としての社会形成のための地域の働きへの参加も大切となる。住民活動へ
のより積極的活動も求められている。
「社会的孤立」とは「家族やコミュニティとほとんど接触がない」ことと定義される。
「社会的排除」は労働、住環境、医療などからのさまざまな排除が含まれる。
孤独・孤立は高度経済成長で日本社会に大きな構造変動が生じた1970年代初頭に始まる。
第一次産業中心から第二次、第三次産業へと進展していき、1990年代半ばまでのいくつかの
大震災、2000年代以降の社会を構成する単位の個人中心への移り変わり、続くコロナウイル
ス感染拡大と長期化などが原因となっていると思われる。従って、「社会的つながり」をす
すめることは並大抵のことではない。スカンジナビアの幼児からの民主主義教育やスウェー
デン、デンマークの実践など、「子ども庁」発足に向けて検討すべきと考えている。
(執筆:新潟県 大澤澄男(No.1030))
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3) 会員リレーコラム
「ぶらりに学ぶ」
千葉県 田尻隆さん(No.4692)
「ぶらり途中下車の旅」が土曜日朝の楽しみです。この番組は肩の力を抜いてボーっ
と眺めるくらいが丁度よく、その週にため込んだ疲労や緊張がゆっくりと緩んでいきま
す。私の推し旅人はなぎら健壱さん。なぎらさんのぶらりスタイルは、あえてスキを見
せるヌケ感にあり、その「余裕」に多くの人は癒されるのでしょう。
本年5月、衆議院本会議にて「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が可決、
成立しました。現場で熱く働く婦人保護事業の先達がゲームチェンジャーとなり国を動か
しました。国のお仕着せでない、困難を抱える女性へのオーダーメードの法律です。
今後2024年4月の施行を目指し、国の基本方針・都道府県の基本計画が策定されていき
ます。そこで私たちには現場の声がさらに反映されるよう積極的に発信していくことが求
められます。これまで積み上げてきた経験・技術・知識どれも必要ですが、更に「余裕」
を加えてみたらどうでしょう?余裕のない中では支援の質は上がらないからです。笑顔の
利用者に「この施設で良かった!」と言われることを目指していきます。
→次回は 千葉県 中根慶太さん(No.5537)の予定です。
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