日本福祉施設士会【DSWI】メールマガジン No.75
2022.7.1
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★ 7月は「社会を明るくする運動」強調月間です
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もくじ
1) 今月のチェックリスト
:保育所職員の能力開発
2) 時事/用語解説
:「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」成立とわが会への期待
3) 会員リレーコラム
:自転車
*本号本文は約3,500文字です。
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1) 今月のチェックリスト
「保育所職員の能力開発」
【 解 説 】
先日、四半世紀にわたり関わりをもっている三つの保育園を経営する社会福祉法人の
定例理事会が開かれ、それぞれの保育園からの事業報告書の提示と説明が行われました。
この報告の中で、2年半にわたり新型コロナウイルス禍にあっても一瞬たりとも事業を止
めることなくコロナ対策に追われながらも利用児や家族・地域への対応に苦慮していた
ことに理事の一人として、日ごろの活動に改めて感謝の念を強く持った次第でした。
社会福祉施設では、どのような状況下でも様々な事業の継続に日々迫られています。
本稿では、社会福祉事業を継続するための事業の一つの根幹である人材の能力開発のう
ち保育所における人材育成について、筆者の関わっている法人の研修の一端を紹介し、
以下の項目についての解説を加えたいと思います。
□職員の課題発見・問題解決能力の伸長:人材養成にあたっては、職員の課題発見・問題
解決能力を伸ばす取り組みを行っていますか。
当法人では年に一回、三つの保育園の全職員と法人役員との合同研修会を開催していま
す。各保育園の年間計画【Off-JT(日常業務を離れての研修/外部研修)・OJT(日常業
務を通じての研修/内部研修)・SDS(自己啓発支援制度)】に基づいて行われている研
修とは別な形(土曜日の夕刻より全職員の参加)で開催しており、各園・各人ともに貴重
な交流の機会となっています。
研修内容については各保育園から日常の業務の中で課題となっている事項を3保育園で
調整のうえ一題を選定し、それぞれの実践の中で得られた内容(課題の解決や問題の軽減
策等)をビデオやパワーポイントなどを駆使してビジュアル化し、得られた知見などを発
表するもので、参加者からの感想・質疑応答やコメントなどが加えられる内容になってい
ます。幸い当法人の理事の中には、教育系・社会福祉系の大学教員や社会福祉士、現役の
他の保育園園長などがおり、それぞれの立場からのアドバイスなどが行われています。
研修を通じて課題の把握と解決に向けての目標や対策についての議論が行われ、新たな
気づきも得られると同時に、法人職員の一員としての自覚とともに日ごろ交流の少ない各
職員同士が交流を図ることによって帰属意識をより深く感じることができているようです。
また、この研修を通じて人間関係の拡がりや他の職場の、この部分について知りたい等
の興味関心が高まり、保育士をはじめ看護師、栄養士、調理師などが、お互いの職場体験
を行ったものや法人内の他の職場への転勤もみられ、法人全体での研修の意義の重要性を
改めて感じています。
なお、研修会終了後には懇親会が開かれ、お互いを知りあう良い機会となっているよう
です。ただし、この2年間は新型コロナウイルス感染症の拡大によりオンラインでの研修で
したが、このような状況下であっても特に若手の職員からはオンラインであっても同じ法
人内で一緒に研修ができたことでお互いに刺激になったことをはじめ、課題や解決策の共
有化や共通認識が得られたとの声が寄せられています。
このように、研修も各事業所のみの計画・実施にとどまらず法人全体での研修を重ねる
機会を設定し実施することも職員の能力開発を行う上で重要であると思われます。参考に
なれば幸いです。
参考文献:『施設長のための業務チェックリスト 日本福祉施設士会編』
全国社会福祉協議会
(執筆:東京都 田村 惠一(No.1029))
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2) 時事/用語解説
:「「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」成立とわが会への期待」
いわゆる「女性支援法」が参議院先議で5月19日、衆議院本会議で全会一致で可決した。
政府提案ではなく、上川陽子元法相、山本香苗参議院議員らの議員提案で売防法改革66年
ぶりの形となる。基本理念に「福祉の増進」「民間団体との協働」「人権の擁護」を位置
づけ、婦人保護事業の婦人相談所(一時保護所併設可)を女性相談支援センターに婦人相
談員は女性相談支援員とし、市町村に配置の努力義務化へ、婦人保護施設の名称を女性自
立支援施設として2024年4月1日より施行される。対象は売防法の売買をする恐れのある要
保護女子から、家出、援助交際、性的被害、DV、子連れ避難、貧困、子育てなどの女性の
抱える悩みや困難、被害などが年齢制限なしに対象とされる。対象者に寄り添い積極的に
人権を守りつつアウトリーチも心がける。
従来の婦人保護施設の職員配置基準は、定員50人以下では、施設長1人、事務員1人、指
導員2人、看護師1人、栄養士1人、調理員3人と他の福祉施設に比べて少なかった。相談支
援のソーシャルワーカーの配置もなかった。女性支援法の女性自立支援施設は婦人保護施
設の名称変更だけでなく、新たな配置基準を定めて拡充し、機能の充実を図るべきだと「女
性支援新法制定を促進する会」は厚生労働省に要請している。
従来の婦人保護施設は都道府県中心に行われてきたが、それに対応しきれないケースにつ
いては、千葉県館山市大賀594に国有地と民間地の購入により深津文雄牧師らを中心とした
キリスト者たちの運営する「かにた婦人の村」が、婦人保護の終生施設として特別養護老人
ホームなみの扱いをうけて運営されてきた。その取り組みは「かにた便」として発行され、
その合本も出されており筆者も大切に所有している。
わが会の役員を長年にわたり務めてこられ、施設福祉実践者で牧師でもあられる井本義孝
氏、母子生活支援施設を中心に女性支援に経験豊かな神戸婦人同情会の青谷学園などの知見
をわが会も活かし、新しい女性支援福祉に新たな発展を、WelfareからWell-beingへと心がけ
てはどうかと思っている。
(執筆:新潟県 大澤 澄男(No.1030))
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3) 会員リレーコラム
:石川県 夷藤 和明 さん(No.4035)
「自転車」
息子が小学生だった頃の話です。自転車を買いに、近くの大手スーパーへ出かけました。
「これがいい」と息子は気に入ったものを見つけ、金額的にも親の予算基準をクリアした
ので(笑)、決めました。しかし、対応してくれた店長さんが整備の途中で不意に手を止め、
息子の学年を確認し「今はちょうどでも体の成長を考えたらもうひとつサイズを上げた方が
いい。ところがそのサイズの自転車は当店では1台しかおいてないので、お急ぎでなかった
らこのタイプの自転車をどのメーカーがどれだけ出しているか調べさせてください。それを
お電話しますので参考になさって他のホームセンターなどでお取り寄せすれば当店より安く
お求めになれますよ」と話されました。
確かにその売り場にあった1台はそれなりに躊躇する値段でしたが、私はそれよりも、今
レジをしてしまえば売り上げになるのにあえてそれをせず、その客により合うものを提案し、
さらに他店で買うことまで勧めてくれたこの店長さんに感激してしまいました。ともすれば
商売人に向かないのではないかとまで思いそうなこのアドバイスは、私の中にずっと心地よ
さを残してくれました。
数日後、約束通り電話をいただいたとき、既に私の気持ちは決まっていました。息子とも
相談し、その唯一置いてあった自転車を買いました。結果的にチョット高い買い物になった
かもしれない、でもあの店長から買いたいという気持ちの方が強かったので、むしろお得な
買い物をした気分で一杯でした。
それはひょっとするとそういう販売テクニックだったのかも知れません。でも少なくとも
客が満足したのは紛れもない事実です。私も就労支援施設の職員として自主生産品を作り販
売する立場、目先の利益に惑わされずお客様の立場に立った商品の勧め方をここで学ばせて
いただいたような気もします。そしてそれは利用者支援にもつながる大切なこと。個別に本
来求められるものを目先の成果に満足せず実践していかなければと思います。
個人的な話で恐縮ですが、自転車ひとつの買い物で、いろいろなことを考えさせられました。
→次回は 東京都 中川 千弥 さん(No.3768)の予定です。
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