「二宮金次郎が最初に農村復興の仕法を実施した桜町(現・栃木県真岡市)が私の在所の隣町ということもあり、いつか詳しい伝記を読みたいと考えていたが、機会がなく何十年もたってしまった。
最近、日本の財政赤字が一千兆円を超し、歴代内閣も財政再建を第一目標に掲げるのに、赤字は増える一方で改善の目途はどうみてもたっていない。国の心配より自分の足元も怪しいのだが、そんな折、守田志郎『二宮尊徳』(朝日新聞社・昭和50)を読んでみると、尊徳その人の生涯もさることながら、江戸末期の過重な年貢制度の下、地主を含む商業資本が、小作制度を盾に拡大する一方、資金提供を受けた小農民は利子と年貢、小作料のために泥沼のような生活苦に陥ってしまう当時のシステムが解説されて、目から鱗が落ちるような感じを受けた。つまり当時の封建的な農村に貨幣経済が支配し始めたことが農村疲弊の要因なのだ。守田志郎氏は『地主経済と地方資本』『村の生活誌』『日本の村』などの著書がある、近世の農村経済が専門で、その面から尊徳の業績を解明しているのだ。[…]」
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